ディレクター 池辺 晋一郎/野村 萬斎
作曲家。東京音楽大学名誉教授。黒澤明監督らの映画音楽や管弦楽曲、合唱曲を多数作曲し、「N響アワー」の司会を長年務めた。2004年に石川県立音楽堂洋楽監督に就任、19年から「いしかわ・金沢 風と緑の楽都音楽祭」(現ガルガンチュア音楽祭)実行委員会会長。日本作曲家協議会会長、日本音楽作家団体協議会会長などを歴任。18年文化功労者。
―垣根のない音楽やっていきたい
「新しい文化を立ち上げる」という言いかたがありますが、文化とはもともとそこにある日常的なものです。もちろん文化はたちまち生まれるものではなく、長い時間をかけてできるもの。その点、金沢は文化とは何かが分かっている町です。藩政時代から続いている邦楽などの伝統芸能や、世界的なオーケストラに成長しつるあるオーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)の活動が、この音楽堂を中心に日常的に行われています。
音楽堂での肩書は「洋楽監督」ですが、洋楽と邦楽、クラシックやポップス、オペラ、演劇などというジャンルをなくした音楽をやっていきたい。邦楽ホールだから西洋の音楽がだめだとか、コンサートホールだからオペラ、演劇は無理とか、そういう型を取り去った、またジャンルという概念もとりはらった、垣根のない音楽をやっていきたいですね。
(2004年発行、CADENZA Vol.5 インタビューより抜粋)
狂言師。加賀藩お抱え狂言方の流れをくむ。国内外で多数の狂言、能公演に参加し、普及に貢献する一方、現代劇や映画、テレビドラマでも活躍する。2021年に石川県立音楽堂邦楽監督に就任、国民文化祭(いしかわ百万石文化祭2023)開閉会式総合ディレクターを務めた。24年6月から県立音楽堂アーティスティック・クリエイティブ・ディレクター。
―他地域から人を吸い寄せる
金沢という土地は国立工芸館をはじめ幾多の個性的な文化施設に恵まれ、さらに美食の名所であり、多方面に注目度の高い土地柄ですから、その創造性に一役買えたらと思います。僕はよく「アップデート」という表現を使いますが、「時代と共に呼吸しながら常に新しく生まれ変わる」点に古典芸能の本質があると思います。
音楽堂開館15周年の折にお招きいただいた拙作〈ボレロ〉ではオーケストラ演奏と伝統芸能とが一つの舞台で響き合い、まことに手ごたえがありました。それを可能にしたのがこの音楽堂の個性であり、今後はさらに新古融合・和洋競演を推し進める全国的モデルケースに育てていければと思っています。何であれ、「こんなスゴイことをやるのなら行きたいな」と、他の地域の人を吸い寄せる文化発信力を持ちたいですね。
(2021年発行、CADENZA Vol.68インタビューより抜粋)